「この度はシステムでご迷惑をお掛けし、申し訳ありません」

取引先の担当者に頭を下げながら、自社のシステムが起こしたトラブルを謝った。

サービスリリース直後に予想以上のアクセスが集中し、サーバーが一時的にダウン。

結果的にエンドユーザーへのサービスが小1時間停止されることになったのだ。

もちろん一度謝っただけでは取引先の怒りは収まらず、私への説教は終わらない。

説教を受けていると、動物的な本能からか、自然に視線と頭を下げ防御の姿勢を取る。

すると背骨が曲がり、ただでさえ痩せ型の身体が余計に弱っていくのを感じる。

これは私が中小のシステム会社に営業職で入社した2015年の出来事である。

入社一年目に任された案件がまさかのハズレ案件。

トラブルが続き、フロントの営業マンとして頭を下げる場面が何度もあった。

その年は15年ぶりに日経平均株価が2万円台になり、

「バブルの再来ではないか?」という議論がネットを騒がした。

バブルというと、私が生まれたのが1991年。

生まれた瞬間からバブルは崩壊し、1973年から続いた安定成長期が終わり、

失われた20年と呼ばれる低成長期に突入した。

自分がこの世に生まれ落ちた瞬間から、不景気が始まったのだ。

生まれた翌年の1992年にはゆとり教育が始まり、

小学校の隔週土曜日が休みに移行された。

更に私が小学5年生になった2002年には完全学校週5日制になり、

土日は学校が休みというのが当たり前となった。

当時小学生だった自分は土曜日の学校が無くなり呑気に喜んでいたが、

その後の人生の様々な場面で大人たちから「これだからゆとりは~」という言葉を浴びせられ、

まるで社会のお荷物のような扱いを受けることになる。

大人たちが勝手に決めた教育制度によって批判されることに対して違和感を覚え、

昭和の詰め込み教育を受けてきた世代の大人たちに対して反骨心を抱くようになった。

システム会社に入社してからの1~2年は仕事に振り回され、

どっぷりと社畜のような生活をしていた。

朝7時に家を出て、帰りは終電。睡眠時間を取りたいが、晩ごはんを抜くわけにもいかないので、

帰宅の最寄駅から家までの間にコンビニのおにぎり2つを歩きながら食べて済ませることもあった。

そんな生活を続けていると、元から痩せていた体型は更に痩せ、

入社したときから-7kgほど落ち、身長181cmで体重58kgという極度のもやし体型になっていた。

社会人3年目になり、仕事の忙しさが少し落ち着いてくると少し自分の時間を持てるようになった。

無性に身体を動かしたくなり、近所のジムに通ってみることにした。

区営のジムなので、1回260円という破格の値段だが、

もちろんトレーナーはおらず、アルバイトの監視員が居るだけでマシンがただ並べられているだけだ。

マシンに書かれた簡単な説明を読みながら、

見よう見まねで身体を鍛えてみる。

一通りトレーニングを終え、ジムを出る時の爽快感はなんとも言えないものがあった。

それから継続してジムに通うようになり、

1ヶ月後には自分の中では明らかに体型に変化があった。

胸筋が以前よりも膨らみ、腕の力こぶも少し大きくなっている。

あくまで自分しか気づかない程の小さな変化だったが、

それまで痩せ型をコンプレックスに感じていた自分にはとても大きな変化に感じた。

仕事は頑張っても思うように成果が出なかったり理不尽な出来事に嫌気が差すこともある。

ただし筋トレだけは頑張れば頑張った分だけ目に見える結果が出た。

この結果が積み上がっていく感覚にハマってしまい、

何をやっても3日坊主だった自分だが、どれだけ忙しいときでも

週に1~2回は必ずジムに通うようになった。

社会人4年目の春。

会議が終わった後に、上司に自分だけ残るように言われた。

自分が提出した今期の営業計画書に対して不満があったらしい。

確かにやっつけで15分くらいで仕上げた資料だったのでお叱りを受けるのもある程度想定内ではあった。

机を叩きながら、何度も罵声を浴びせてくる。

私は自然と視線を下げ、防御の姿勢を取る。

すると、服の上から盛り上がった胸筋が目に入る。

シャツの袖は腕の力コブで少し張っている。

「もしその気になれば、コイツを一瞬で黙らせられる」

その思考が頭によぎってから、自然と視線が上がり、

上司の罵声は何とも思わないようになった。

映画『ローン・サバイバー』の冒頭に、ネイビーシールズの入隊訓練のシーンがある。

過酷な訓練を受ける志願兵たちに対して上官がある言葉を言い放った。

「肉体の強さは精神の強さだ」


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